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2007年8月30日
直木賞作品「吉原手引草」に学ぶ
第137回直木賞は松井今朝子氏(幻冬舎)に決定しました
「吉原手引草」プロの小説家の構成、文章のリズム、キャラクター設定、描写総てにおいて凄みを覚える見事さです。 失踪した花魁を巡る一人称ミステリーという形式をという窮屈な形式の中で松井さんのテクニックが圧倒します。聞き手の身分が武士とわかる後半部分になると、話し手の言葉遣いが微妙に変化して小説ワールドへのめり込みました。 江戸時代の吉原の情景が、目の前に登場し、主人公の花魁の姿があざやかに浮かび上がってきました。中心となる人物の心情を無視しながら吉原を始めて訪れる横田まで、手をとり案内するかの様な気分にさせてくれました。主人公の主観的な心情はダイレクトに書かれていないのにも関わらず、背景や周囲の事物、人間模様といった材料を読み取りかき集め、見事に具現化して事件を捜索する刑事のような手法で読者である私をひきつけてくれました吉原の道中を飾るほど大出世した花魁・葛城が、廓に多大な迷惑をかけ、誰もが口をつぐむほどの事件を起こして失踪。葛城を慕うもの、怒るもの、按ずるもの総てを網羅しつつ吉原に生きる様々な人間が彼女を言い表し彼らに語られせることによって、吉原という真の主人公の世界が明らかになっていきます。まったく廓のしきたりをを知らないという触れ込みで戯曲の材料にと取材する一人の男が、吉原の住民たち(内儀、見世番、番頭、芸者、おかみ・・・・・から葛城について聞きだす形で話は進み吉原という世界の実情、彼らの生の有様うんぬんが雄弁にすべて1人称で語られます。覚悟を決めた人間が話す吉原という世界で完結する世捨て人達の言葉には力と熱とプライドが見受けられます。ただひたすらに、吉原で働きそれぞれの職にゆずれぬ自信を持ち、力強い足場を築いている。 彼らは悲しいほどに強くしぶとく生き抜ける姿に脱帽でした。肝心の葛城が、何故「事件」を起こし失踪したのか?それは最後の最後に集約されています。 葛城の幼少期、それが次第に最終幕へと繋がっていく様は本を購読しかありません。手元にあった本は妹分へ引き継がれました・・・・★映画<舞妓は~ん>にも通ずるものを感じました。★松井さんのHP137回直木賞に輝く時代小説家の松井今朝子さんは、祇園の名料亭川上の長女。毎日更新される今朝子の晩ごはんコーナー始め必様々な手料理やグルメ探訪を拝見するとブログ継続している横田大いに学ばされます。さりげなく点描される劇評や文化論、交友録を参考に人・物・事への絆を大切にしたいと思います。
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